社会的構成主義

定義


社会的構成主義という用語はいろいろな意味で用いられているように思われる。元々は科学全般におけるメタ理論である。心理学では、大別すると以下の2つの意味で用いられているようである。


①社会的構成主義は論理実証主義に対抗する理論である。この文脈では、対象と表現の関係性に関する理論と捉えられる。これは、Gergen(1994)らの説明である。心理学においては、おそらくこちらが本家本元の意味(科学全般のメタ理論の場合もこちらの意味)。


②社会的構成主義は心理学的構成主義に対抗する理論である。この文脈では、心や知識のありかに関する理論と捉えられる。レフ・ヴィゴツキージャン・ピアジェを対比する場合は、この意味で使われる。おそらく心理学ではこちらの意味がメジャーである。


論理実証主義に対抗する理論としての社会的構成主義


論理実証主義は、ある事実を最も正確に表現する方法を求めて、その表現方法の妥当性と信頼性を上げていこうとする。それに対して、社会的構成主義は、ある事実を表現する方法は多様にあり、そのどれもがもっともな表現であり、どれが最も妥当で信頼できるかを測る外的な基準はないと主張する。また、ある表現から引き出す意味は多様にあり、そのどれもがもっともな意味であり、どれがもっとも適切な意味かを測る外的な基準もないと主張する。つまり、対象と表現の一対一対応を前提する論理実証主義に対して、社会的構成主義は、対象から表現への一対多の対応と、表現から対象への一対多の対応を、その全体をひっくるめれば、対象と表現との多対多の対応を前提しているように思われる。


対象から表現への一対多の対応


ある対象をどのように表現するかは、その対象によって決まるのではなく、表現者が、ある歴史や文化の中で作りあげてきたものだと考える。表現者の歴史や文化が異なれば、同じ対象について異なる複数の表現がありうる。そのどれもがもっともな表現であり、どれがより正確か判断することはできない。しかし、ある時代や文化においては、ある説明が正しいとされるのであり、その「正しい」という評価がどれだけ維持されるかは、その表現自体の客観的妥当性ではなく社会的要因によって決まるという。これは、トマス・クーンパラダイム論に通じる考え方であろう。


表現から対象への一対多の対応


ある表現の意味は、その表現によってひとつに決まるのではなく、その表現が人々のやりとりの中で果たす機能によって決まると考える。これはバラス・スキナーが「言語行動」(1957)で取った立場と一致する。また、語用論言語行為論に通じる考え方であろう。


心理学的構成主義に対抗する理論としての社会的構成主義




参考文献

Gergen, K. J. (1994). Realities and relationships; Soundings in social construction. Cambridge: Harvard University Press. 永田素彦・深尾誠訳. (2004). 社会構成主義の理論と実践―関係性が現実をつくる. ナカニシヤ出版.


執筆者

HARU

  • 最終更新:2008-11-27 03:08:57

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