認知心理学と身体化認知科学

認知心理学と身体化認知科学の関係


古典的な認知心理学がコンピュータ時代の産物なら、身体化認知科学はハイパーテキスト時代の産物だと思う。


ワーキングメモリーのモデルは、認知心理学の最高傑作だ。それは中央実行系を持ち、視空間スケッチパッド、音韻ループ、エピソードバッファという下位のモジュールに注意資源を配分することによって、それらを制御する。このように、認知心理学のモデルは階層性を前提する。階層性というのは、モジュール間の階層性であったり、モジュール内で行われる処理の階層性であったりする。プログラミングの経験がある人は、処理ごとにインデントが順々に下がっていって、下がり切ると順々に上がってくるのを見たことがあるだろう。モジュール内で行われる処理というのも同じ構造を持っている。


対して、身体化認知科学の最大の特徴は、階層を解体し、脱中心化することにある。例えば、関数の問題を、指でグラフを空書したり、紙に書きながら考えるとき、空書や図は推論モジュールで出された解の単なるアウトプットではない。指の運動や、図の形が何らかの情報(e.g.,増減や交点の情報)を持っており、問題の解や必要な情報は、頭の中だけでなく身体や外界に分散して存在している。それらが適切にリンクすると適切な解が、不適切にリンクすると不適切な解が生じる。まさにこれは、あちこちに散らばった情報が、ハイパーリンクによって関連付けられて、その関連性の中に全体としての情報がたち現れてくるというハイパーテキストの仕組みに似ている。


両者にはこのような違いがあり、対立するように見えるが、私は、両立は可能だと思う。というのも、認知心理学モデルの階層性は時間的な広がり(この処理の後にこの処理…という順序性)に、身体化認知科学の非階層性は空間的な広がり(例えば、目と腕と対象物との関係性)に相当し、両者が作る時空間の中で知性を説明することができると思うからだ。さらにダイナミック・システムズ・アプローチが得意とする秩序と複雑性の問題、つまり、局所的変化が全体的なパターンをもたらす仕組みの解明が加われば、認知発達をも包括する動的なモデルを構築できると考える。


このページでは、これらを統合するような研究を紹介する。(といっても、そういう研究の存在が明らかではないので、はったりです…)


執筆者

HARU

  • 最終更新:2008-11-26 11:44:46

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