認知科学の歴史
認知科学の歴史(a history of cognitive science)
はじめに
当ページでは認知科学の誕生の背景から現在に至るまでの歴史を述べていく。主に西洋科学・哲学史に照らし合わせて大局を述べている都合、日本における認知科学の歴史は述べていない。なお認知科学自体は詳しくは、認知科学を参照のこと。
認知科学は、知能の働き方とその働きがどのように実現しているのかとに関心をもつ、「マインド」(英mind)を研究する科学の一分野である。なお、ここで述べる認知とは、知的活動全般を指し、思考や運動までをも含み、通常より広義なものとして使用されている。また、ここで述べる認知科学も、この広義の意味での認知を対象とする認知科学であることを予め断っておく。
以上の認知科学の発展を、人間の成長に見立てて六つの時期にわけ、「未分化期」、「受胎期」、「誕生期」、「幼児期(第一世代)」、「成長期(第二世代)」、「成熟期(第三世代)」として以下で述べる。あわせて近年再評価された先駆的な学説の紹介も行う。
認知科学史の面白い点
先に余談から。認知科学の各分野(注意、神経、記憶等々)の研究者にとって、認知科学の歴史を学んでも、実務面(論文を書く等々の上)で見返りは薄い。せいぜい論文の冒頭や見出しでの言わば「客引き」の引き出しが増える程度である。しかしながら、「わざわざ」学ぶには2つのメリットがある。
1つ目は、当たり前だが「歴史に学ぶ」ことが出来る点だ。巨大な研究史の中に自分の研究を置くことで、自身の認知科学研究の相対的な位置を確認出来る。過去に似た論争があれば、自身の仮説がどちらの立場か、今後この論争がどちらに傾くのか、そうした指針に利用出来る、そういったメリットがある。
2つ目はより単純だ。つまり認知科学の歴史が面白いということだ。認知科学は知を探求し解明を目指す。故に数万年いや地球誕生以来の人間の知の歩み全てを対象とするすら言えよう。
認知科学の歴史を学んでいく上で、人類の進化や、異文化との生活、宗教戦争、活版印刷の誕生、産業革命、デジタル機器に囲まれる現代、SF小説の世界、科学技術の発展といった数々の魅力的なテーマに出会える。そしてそれらの魅力的なテーマが「知」というテーマで有機的に繋がり、環境の中で考え悩み行動する知的苦闘の軌跡が見えてくる。それは生物科学における生命の神秘、惑星物理学における宇宙の神秘に引けをとらない魅力的なものだ。
歴史概説
認知科学史を六分して述べていくが先に概説する。
まず、「未分化期」において認知科学はまだ科学としての独立をしておらず、輪郭もまだなかった。ルネサンス以降に近代科学が成立・発展していく「受胎期」において、心に科学のメスを入れようとする試みが幾つも生まれた。いわばこれが認知科学の受胎と言えよう。
やがて20世紀になり二度の大戦を経て、科学技術、情報理論、論理学が大幅に進歩し手を結び電子計算機が誕生する。電子計算機の登場は知能という観点において人間と機械(人工物)の境界を曖昧にした。このような背景において、アメリカを中心に知能を活発に論じ合うシンポジウムが生まれ、認知科学は産声を上げる。これが「誕生期」である。
その後、人工知能と電子計算機の発展を受けて「幼児期(第一世代)」が隆盛となる。続いて神経科学の発展を受けて「成長期(第二世代)」を迎える。その後は第三世代システム論やアフォーダンス再評価の流れをうけながら、「成熟期(第三世代)」に差し掛かり、現在に至っている。
未分化期
この当時、認知科学はまだ科学として独立をしていなかった。具体的には古代ギリシア哲学が登場した紀元前から近代科学の登場に至るまでの期間である。そもそも宗教と科学と技術の区別が現在ほど明確ではなく、「知」は神に関する話題の中で論じられることが多かった。期間も長く認知科学のルーツとなるアイデアの多くはこの時期に提唱されている。以下、絞って述べる。
古代ギリシア哲学
認知科学のルーツもソクラテス、プラトン、アリストテレスらの古代ギリシア思想にまで遡ることが出来る。後の認知科学にとって最も重要な点は、古代ギリシアにおいて、認知科学の最重要テーマである「プシケ」(心)と「ロゴス」(理性)が既に登場していることであろう。
特にプラトン著の「メノン篇」は、知についての記述をした現存する世界最古の著作であり(ガードナー、1983)重要である。
中世イスラム科学
錬金術
イスラム・ヨーロッパにおける錬金術の発展は、人間の生物・物質への関わり方を大きく変えた。錬金術とは狭義には金以外の金属から金を生成する呪術である。この錬金術は空想上のものであるが、しかしながら、人が生物や物質の構造を解明し、操作することで対象を人間の希望通りに変更出来るという思想を促し、後の科学思想に大きな影響を与えた。
ルネサンス
ルネ・デカルト
ルネ・デカルトは数学・哲学における数々の功績により、17世紀のフランスを代表する哲学者である。認知科学にとって大きな影響を与えたのは、何と言っても心身二元論の提唱(人は心と身体から成り立つ)であろう。
経験説と生得説
大陸合理論の特徴
イマヌエル・カント
知覚論
受胎期
経験科学の確立期である。中でも、19世紀の生理学と物理学の発展をきっかけに実験心理学が登場する。この実験心理学こそが認知科学の実父と考えられる。
生理学と物理学の発展
記憶研究の先駆
進化論の登場
実験心理学研究室の誕生
文学
無意識
行動主義
マルクス主義
新行動主義
認知主義
電子計算機
情報科学
心の哲学
実験心理学の発展
誕生期 認知革命
ダートマス会議
情報主義心理学
PSモデル
神経科学
認知心理学
幼児期 計算主義の流行
構造主義
補足:異端者たち
ギブソン
ジャン・ピアジェ
ヴィゴツキー
成長期 PDPモデルの登場
PETとfMRI
PDPモデル
ミラーニューロンの発見
スーパーヴィーニエンス
成熟期 身体化主義の登場
オートポイエーシス
ロボティクス
認知発達の視点
心の理論
進化と言語
状況主義
参考
関連サイト
執筆・編集者
DDA
- 最終更新:2008-11-26 03:02:49